2025年5月ゲーム開発月報(新作リリース!)
一年半にわたるフルタイム開発を経て、5年ぶりの二本目のゲーム作品『ノアのジレンマ』が2025年5月16日にSteamでリリースされました!
『ノアのジレンマ』をリリースしました
今この文章を書いてる時点で、『ノアのジレンマ』の売上本数がちょうど200本に辿り着いた。現在のレビュー数が27件で、好評率が96%。件数が少なくて、まだ高評価とは言い難いが、既にすごく楽しそうに遊んでくれたプレイヤーが現れたので、いいゲームを作ったかもしれないと思えるようになった。大人数に届けなくても、限られた人が楽しんでいただけただけでも、このゲームを作った甲斐を感じた。
その一方、ウィッシュリストの数(1100くらい)から考えると妥当な数ではあるが、発売してから2週間で200本は商業的にはイマイチに過ぎないのだ。Steamの「話題の新作」に入ることができなかったので、これからは爆発的に売れることもないだろうけど、ゲーム自体は十分に独特だと思って、じっくり売り続ける可能性はまだ残っている。約2000本を売れたら黒字になるけど、そうなるまでどれくらいかかるだろう。でもこれからNintendo Switch版も出すし、黒字化のスピードが上がるといいね。
全体的に振り返ってみると、このプロジェクトはあまり手応えがないなと感じた。このモヤモヤの気持ちを表すいい日本語がある。このプロジェクトは、「人の土俵でいい戦いをしたけど観客が少なすぎる」ような感覚を与えてくれた。『ノアのジレンマ』では自分が大好きな、もしかすると得意でもあるナラティブ要素をほとんど頼らず、ゲームプレイ一本で勝負に出た。
このゲームを作ろうと決めた時、自分はナラティブ抜きでもいいゲームを作れるって証明したかったか、単純にストーリーを作るのが面倒になって新しいアプローチを試したかったか、それとも人気のあるジャンルを選んでもっと早く売れるのに目指したかったか、今となってもうはっきり覚えていない。たぶんどれもあっただろう。
しかし作り上げた今だからこそ分かったのは、このゲームは成功失敗関係なく、作らないと創作者として次のステップには進めない類の作品なのだ。学んだことやようやく意識できたこと、技術的な成長など、今回の収穫はあまりにも多かった。そして、どのゲームにおいてもこの考えはブレずに持っているが、とにかく完成させて世に出せたのは、もう成功だと考えていいでしょう。
今後の話をする前に、5月に刺激を受けた3つの作品について少し話します。
『エレンディラ』 ガブリエル・ガルシア=マルケス
『ノアのジレンマ』の世界観を作り上げた最大のインスピレーションは間違いなく、ガブリエル・ガルシア=マルケスの「マジックリアリズム」文学である。特にゲームの完成直前に読み終えた『エレンディラ』という短篇集の雰囲気が、『ノアのジレンマ』の海に深く関与する世界観にもっとも近いと感じました。同じくらいの熱量と濃度を持ちながら、『百年の孤独』よりずっと読みやすい作品だと思うので、おすすめです。
『牯嶺街少年殺人事件』 エドワード・ヤン
4時間もあるこの映画をずっと見たかったが、ゲームリリース後ようやく見れました。初のエドワード・ヤン作品で、なぜか見ている時よりも見終わった後の余韻のインパクトがあり、素晴らしい映画でした。白色テロが終わったのも、ソビエト連邦の崩壊も、『牯嶺街少年殺人事件』 の上映も、すべて1991年でした。2025年の今、世界はあの時より良くなりましたか?そう考えると悲しい気持ちになります。が、何か現実を変えられる力を持つ作品を作りたくなりました。
『瞬きの音』 押見修造
最も好きな漫画家さんの一人、押見修造先生の新作です。前作の『血の轍』の後、次に何を描くのかすごく気になっていたが、まさか同じ私的体験な路線で真っ直ぐな自伝式漫画が来るとは思いませんでした。同じ路線とは言え、全く重複する感覚がなく、本作はむしろ『惡の華』と『血の轍』と三部作のように見えて、作者の内面のより深いところに侵入する軌跡が描かれているような感じでした。
創作者としての自分は斬新なことを挑戦しがちなのですが、消費者としての自分は常に好きなものをどんどん頂きたい気持ちなので、『瞬きの音』もすごく面白く読めました。やはり創作者としては、全く未経験なスタイルに挑戦するのもいいし、押見さんのようにじっくりその一人のワールドを築いていくのもいいですよね。
これからの計画
上の話も踏まえて、これからの三作目はたぶんナラティブ中心のゲームに戻ります。そして収入がまだ安定していないうちには、6ヶ月~1年以内で完成できる短編ゲームしか作らないつもりです。今回の宣伝は結構苦労したので、これからはいろいろやり方を変えていくつもりで、一番大きな決定は英語のYoutubeチャンネルも作ってみるのです。日本語の方は引き続き、Xとnoteだけでいいと考えています。
フルタイムで一人でインディーゲームを作り続けたいなら、本当にすべての武器を使わないと生きてさえいけないかもしれないですね。残酷なゲームですけど、これ以上面白いゲーム僕は知りません。三作目、乞うご期待!
GP
2025.6.1